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〜せいうち訳者のシュールな日乗(常?)〜

2000年4月13日〜7月5日
7月5日

 翻訳の仕事をしていて一番幸せな時はいつか、と聞かれれば、即座に「翻訳の仕事が終わった時!」と答えるだろう。終わった時、というのは、つまりその時点では仕事はしていないのだから、じゃあ仕事をしていない時が良いのか、と言われれば、「いや、そうではない」と答えるしかないだろう。あくまで激しく仕事をして、それが終わった時、でなければいけない。

  それでは、翻訳の仕事が嫌いなのか、と言われれば、それは「好きです」と答えることになる。でも、仕事をしている時、楽しいか、と言えば、やはり「楽しいと思うことはあまりない」と言わざるを得ない。もちろん、ごくまれに楽しいこともあるけれど、やはり仕事が一つ終わって、「今から何して遊ぼうか」と考える楽しさとは比べようもない。なら、ずっと遊んでいれば良いではないかと言う人もいるだろうが、おそらく、ずっと遊んでいられるような金が手に入っても、今の仕事をやめることはないだろう。もちろん、ペースはかなり落とすだろうが。

  プロになる前は、翻訳の作業そのものが楽しくて仕方がなかった。今のような状態になるなんて夢にも思わなかった。でも、プロにならなければ良かったとは露ほども思わない。好きなことを仕事にした人はたいてい同じような気持ちではないだろうか...。ただ、大半が前に訳したところのコピーで済むような文章を見つけたとき異常に喜ぶ自分を発見すると、「ほんまは、おれ、翻訳嫌いなんちゃうか」と思ってしまうが。


6月5日

 横浜の歴史を勉強していると、つくづく「何をするにも、全体を見渡せる人がいなければダメだ」と思えてくる。都市の景観など、無粋なマンション業者が1つでも入り込めば、どんな歴史がそこにあろうと、あっという間に崩れてしまう。京都の例を見ればそれは明らかだ。

 横浜の場合、関東大震災と、二次大戦後の接収でほぼ全盛期の町並みは全滅していたのだから、京都よりもはるかに条件は悪かった。しかし、戦後全く新たに作ったにもかかわらず、開港当初の様子が想像できるような施設、景観が今の横浜にはある。それは、街作りを総合的に見られる人が市政に参加していたからなのである。

 ほんの少しの手違いで、横浜の街は無粋なノッペラボウのようなものになるところだった。それを思うと背筋が凍る気がするし、そうなっていれば、今頃、もうここに住んではいないだろう。

 しかし、今の横浜市政はとてもほめられた状態とは言えない。これからのことは大変不安である。横浜には、創業100年以上経ってから突然味が悪くなったパン屋もあるのだ。守るのは大変だが、崩れるのはあっという間である。


5月22日

 「ヤング・ジャパン?横浜と江戸」という本を買った。英国人ジョン・ブラックが、日米修好通商条約締結(懐かしい!一生懸命憶えたなあ)から、明治13年までの日本での出来事について書いたものだ。ブラックは、横浜で刊行されていた週間英語新聞「ジャパン・ヘラルド」の編集などをしていた人物。

 最近、横浜の郷土史家になってやろうか...という気持ちがムクムクと沸き起こってきている。郷土史研究、という点では、歴史が浅い分、有利である(そういうのを有利、というのだろうか)。そういえば、シティー・ボーイズのきたろうが、郷土史家のことを退屈な人間の象徴として描いた一人芝居をやっていたのを思い出す。町の公民館だか何だかで講演をするのだが、その話が本当に微妙な具合に退屈で、その退屈さがかえって笑いをさそうというような、かなりネジクレた芸だった。あわよくば、そんな感じで、横浜について聞かれもしないウンチクを傾ける変なおっさんになってしまおうかとも考えている。

 というわけで、これからは今まで以上に横浜の話題を多く取り上げる。そのつもりでお願いしたい。


5月7日

 横浜は他所の人が思っているよりずっと田舎である。中心市街地を50mも外れると、昭和40年代を彷彿とさせる古めかしい商店が建ち並ぶ。駄菓子屋、帽子屋、布団屋、豆腐屋....。店の人たちはとても気さく。構えはちょっと野暮ったい。とても300万都市!というイメージではない。

 例によって近所を徘徊していた。今日はちょっといつもとはルートを変え、本牧の表通りではなく、裏通りを通って元町に向かおうと思った。途中で毎日何かの食材の特売をやっているというスーパーを見つけたので、価格調査をする(最近凝っているのだ....)。かかっていたBGMが、妙に凝ったアレンジの「かえるの歌」。ものすごい音の厚みで輪唱をやられると笑いをこらえるのに苦労してしまう。(やっぱり横浜って田舎くさい)と思いながら店を出た。

  しばらく行くと一軒の家の表札が目に留まった。
  「周富徳」
何か見慣れた字面だなと思いながら、それが「しゅう・とみとく」だとわかるまで20秒くらいを要した。(なんだ、しゅうさんの家か)と思って通り過ぎかけたが、2、3歩行くと「は!」として、思わず駆け戻って表札を確認してしげしげと眺めてしまった。

 何か得したような気分で立ち去ろうとした途端、停めてあった車の中の人物と目が合った。よく見ると、まさしく周さん本人ではないか!帽子かぶってないからわからなかった。さすがにバツが悪く、思わず駆けだしてしまった。

 その瞬間、ぼくは気付いた。「なんだ、俺が一番田舎モンじゃん!」


5月1日

 「南の島に行きたい」ここ何年か、このフレーズがすぐに口から出てくる。具体的にどの島かということは言えないのだけれど。ハワイかグアムかサイパンか。ミッドウェー島も素晴らしいみたいけど、鳥の楽園でそう簡単に入れないらしい。やっぱりパスポートのいらない沖縄か。それも本島ではなく石垣島とか。ハイサイオジサン!

  北国の人には悪いけれど、ぼくはどうしても南指向である。オホーツクの流氷をタダで見せてやると言われてもおそらく行かない。理由は「寒いから」。以上だ。ぼくの頭の中には、「寒い」=「不幸」とい短絡的な思考ができあがっていて、そう簡単に動かせそうにない。もちろん、テレビで見ている分には流氷はきれいだし、「北の国から」なんて涙をバケツ一杯は大げさだけど、おちょこ一杯くらいは流している。でも、やっぱり寒いのはいやだ。

 ああ、ハワイに行きたい。オアフ、マウイ、カウアイ、ハワイ、モロカイ....。


4月22日

 横浜 光る街
 雨が降る
 まるで古い映画さ
 "Singin' in the Rain"
 雨男 唄う

 赤い靴 履いた君は
 異人さんにでも 連れられて
 迷いこむよ
 このチャイナタウン
 辺りは 火の海

 慌てて逃げる 家鴨
 火事は ボゥボゥボゥ
 カンカンカン ウ〜〜〜
 赤く燃える街 逃げる
 あれはきっと 北京ダック

 横浜 光る街
 火が昇る
 まるで夢の中
 このチャイナタウン
 辺りは火の海

 雨と 燃える炎
 背に受けて
 逃げる
 君の胸には しっかりと
 それはあの 北京ダック

 「北京ダック」by 細野晴臣


  火の海になったら困るけど、「料理されたくないよー!」と逃げ回るブクブクに太ったアヒルは一度目撃してみたいものです。せっかく横浜の、しかも中華街のそばに暮らしているのだから。

  そう言えば、中華街で北京ダックとかフカヒレとか、ツバメの巣とか、高級料理は食べたことがありませんね。いつも、チャーハンとか、チンジャオロースーとか、酢豚とか、「そんなの家でも作れるじゃんよ(横浜弁?)」と言われてしまいそうなものばかり。でも、とてもおいしいです。特に、おいしい店は....。教えません。熱心に読んでくだされば、たぶんわかる時もあると思います。


4月15日

 NTTが72000円の新規加入金を廃止するらしい。しかし、そもそも何で72000円もの大金がいるのだろう。しかも、段階的に値下げするのかと思っていたら、「廃止」だという。はじめからいらないお金なんじゃないの?と言いたくなった。

 何だ!よくよく新聞を読んでみたら、72000円は払わなくてよくなるわけではなく、払わない場合は、毎月の基本料金が高くなるというだけのことじゃないか。どのくらい高くなるのか、非常に気になる。NTTのすることはよくわからない。

 これまで電話の加入権を売買していた人はどうなるんでしょうね。


4月14日

 カモメがいなくなってしまった。カモメは国体のキャラクターになったりして横浜のシンボルのような扱いを受けている鳥だが、実は横浜には一年の半分くらいしかいない。渡り鳥なのだから当然である(無知なぼくは最近この事実を知った)。秋と冬にしかいないのに、このVIP待遇はどうだろう。その反対にスズメ、カラス、ハトなど一年中横浜にいて、生活をともにしている鳥たちは非常に邪険にされている。

 すごい矛盾だが、案外こういうことは多いのかもしれない。パーティに律儀に時間どおりに来た人よりも、遅れてやってきた人の方が良い思いをしたりしてね。ちょっと違うか。

 かく言うこのぼくも、カモメがいなくなって非常に淋しい思いをしていることは確かなので、やはりこれは仕方がないことなのだろう。


4月13日

 ご無沙汰しております。「みなさん、お元気で・す・か?」なんて言っても、もう元ネタが何か誰も憶えてないだろうな。ともあれ、復活です。別に何があったというわけではないのですが、何となく書いていませんでした。これは、書く気がないというよりも、書くのにのめり込むのが怖くなった、という方が正しいでしょう。でも、そうならないよう、気を付けてやっていきます。

 テキスパートに期待の新人が入った。契約金わずか8000円ほどで一生働いてくれる下訳者さんである。ただし、彼は人間ではない。機械翻訳ソフトだ。これまでバカにして使わなかったのだが、ちょっと使ってみる気になった。別に翻訳精度が向上したからではない。知能が正常な人間であれば失笑するような訳しか出てこないのは相変わらずなのだが、少しはタイプの量を減らせるか、と思ったのだ。このままいくと腱鞘炎になるのは目に見えているから...。

 それに、どうにも頭がはたらかないときに、とりあえず直訳してから考えるか...なんてこともあるのだけれど、翻訳ソフトがあれば、この直訳は自分でやらなくて済む。飛躍的にスピードが増したかどうかはわからないけれど、同じ量をやっても疲れは少ないようだ。翻訳を勉強中の人にはすすめないけれど、プロにはおススメである。


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